に堺に寄りたかったため

に向かう前に堺に寄りたかったため、官兵衛と別れた。
 堺では牛太郎の逆鱗に触れる出来事が起こっていた。
 堺に入った一行は、当然、なんの疑問も持たずに、今井宗久から借り受けている屋敷にやって来たのだが、屋敷内はがらんどうで、住んでいるのは宗久の使用人だという小者の男一人だった。
「茶屋殿ならその辻を曲がってずっと行ったところに移られましたよ。大きな棟門を構えられているので、すぐにわかるはずです」
 牛太郎はすでに拳を握り締めて震えている。
 栗綱から下馬したまま、使用人に教えられたとおりの道のりを辿っていくと、なるほど、稲葉山の自宅の板葺きのそれよりも見事な瓦門がそそり立っている。仰々しく閉ざされていて、あろうことか太刀を帯びた番兵が一人、門前にて睨みをきかしていた。
「あの野郎……。この前来てからまだ一年ちょっとしか経ってねえぞ……。なんて成金根性してんだ、あいつ……」
「な、中島殿はそこまで財を成しているのか」
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 と、弥八郎も絶句している。栗之介は呆れて笑っていた。
「別によいではないですか。殿の配下の中島殿が財を成しているということは、殿もそれだけ財を成したということでしょう」
「そういう問題じゃねえっ!」
 牛太郎は門隣の通用門に飛びついていき、錠をがちゃがちゃとやみくもに扱ったが、
「な、なんなんだ、お前!」
 番兵に引き剥がされて、道端に叩きつけられてしまう。血相を変えて抜刀し、牛太郎に構える番兵。
「ここが茶屋四郎次郎様のお屋敷だと知ってのことか!」
 牛太郎の怒りは頂点に達した。尻餅をついたまま太刀を鞘から抜き払い、
「テメーこそおれが誰だかわかってんのかっ!」
 おもむろに起き上がると、番兵に向かって振り落とそうとした。栗之介と弥八郎があわてて掴みかかるも、牛太郎は左手に太刀を振り回しながら喚き立てる。フォルティス 時計
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「シロジロっ! 出てこいっ! ぶっ殺してやるっ!」
「落ち着けって、旦那っ」
「おれに内緒でふざけたことしやがってっ!」
 すると、通用門の覗き窓から悶着を見つめてくる目があった。長い睫毛をしばたたかせながら、大きく縁取られた瞼に寄り目ぎみの瞳を置いているのは、彩だ。
「あーやっ! 一体どういうことだ、あーやっ!」
 ようやく、通用門の扉が開いた。黄色の小袖をまとった彩が現れて、
「彩様っ。危険ですから、お控えくださいっ」
 などと、番兵は信じ難い敬いようである。彩も彩で、澄まして突き上げている鼻先に、どこぞの小豪族の娘ばりの威風をかざしており、
「よいのです。こちらの御仁は織田様の御家来、簗田出羽守殿です。お通しして差し上げなさい」
 と、番兵を即座にひざまずかせ、牛太郎ならず、栗之介も弥八郎も棒立ちさせた。彩に会ったことのない利兵衛だけは、口を半開きにして見とれている。
「な、な、なんの真似だ、あーや」
「立ち話もなんですから、中へ。――何をしておるのですか。客人をお通ししますゆえ、開門しなさい」
「は、はいっ」
 番兵はあわてて屋敷内へと駆け入り、鍵板を外して重々しい門を広げていく。狐につままれたように立ち尽くす牛太郎の視界には、五、六人ばかりの男女、奉公人や女中たちが騒動に恐々としながら彩の顔色を伺っているのが入ってくる。
「さ、どうぞ、お入りください」
 女番頭のように取り仕切っている彩に促されて、主人の牛太郎は固唾を飲み込みながら門をくぐる。彩に引き入られる一行に、奉公人たちはささっと道を開け、牛太郎は栗之介と顔を見合わせてしまう。
 くぐりいると、まず、庭だった。松の木が一行を迎え入れるようにして枝葉を伸ばしていて、玄関口までの通路は緑苔の絨毯に飛び石が埋め込まれている。端のところどこ
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by diaolo | 2013-10-04 15:54
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