魚雷と艦を一直


「取舵いっぱぁぁぁいッ!」
 高柳が伝声管に向かって絶叫のような声で叫ぶ。
 『大和』は左に急速回頭する。魚雷と艦を一直線にして相対面積を小さくし、回避率を上げる。対魚雷の基本的な回避行動である。
 四本の魚雷と『大和』はすさまじい速度で近づく。
「少尉!」
 大和は翔輝の胸に飛び込む。実戦経験のない大和はいきなりの奇襲攻撃に顔を真っ青にして恐怖に身体を小刻みに震える。翔輝はそんな大和をしっかりと抱き締める。
「大丈夫。艦長ならきっと避けられる。安心して」
「少尉???ッ!」
 腕の中で震える大和を、翔輝は強く抱き締める。
『魚雷接近!』
 伝声管から響く見張り兵の声に、全員が息を呑んだ。そして???

 『大和』はギリギリで魚雷全本を回避。駆逐艦数隻が敵潜水艦撃沈の為に魚雷が来た方向に向かって行ったが、駆逐艦は敵潜水艦を発見する事はできなかった???

「バカ者おおおおおぉぉぉぉぉッ!」
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 すさまじい怒号が響き、三人の水兵服を着た少女が吹き飛び、冷たい鉄の床に激しく叩きつけられた。
 三人は怯えた目で自分達を吹き飛ばした金髪碧眼の女性を見詰める。その瞳にはすさまじい怒気が込められていた。
「貴様らは一体何をしていたのだッ!」
 竹刀を床に激しく叩きつける。バシィンッ! というすさまじい音に、三人の少女は涙目になって必死に土下座をする。
『も、申し訳ありませんッ!』
「ならんッ! 敵潜水艦を発見できんのは貴様らの精神が弛(たる)んでいるからだッ! 猛省せいッ!」
「金剛さん! もうやめてください! もういいですから!」
 大和が悲痛の叫びを上げて止めるが、金剛はそんな大和にも激怒する。
「何をバカな事を言っている! 貴様はこいつらのせいで死ぬ所だったんだぞ!?」
 金剛は《海軍精神注入刀》と名づけている竹刀を床に倒れている三人の少女達に向ける。少女達は「ひぃッ」と小さな恐怖の悲鳴を上げる。
 この三人は先程艦隊の左側を担当していた駆逐艦達だ。金剛はこの三人が敵潜水艦を警戒していながらもそれに気づかず、むざむざ魚雷を放たれた上に追跡も失敗した事に激怒し、三人に処罰を加えていた。
 金剛は血走った目で三人を睨む。
「さぁ立てッ! 海軍精神叩き込んでやるッ!」
『はいッ!』
 三人は今にも泣きそうな顔で一瞬で立ち上がる。
「歯を喰いしばれッ!」
『はいッ!』
「金剛さん! 私は無事なんですからもうやめてください!」
 大和は金剛の袖を掴むが、簡単に解けた。
 金剛は優しすぎる感情中心の現連合艦隊旗艦の大和を見て、さらに堪えられない怒りを解放して激昂する。
「貴様がちゃんとせんから水兵は弛むんだッ!」
 金剛は大和の襟(えり)を乱暴に掴み、ぐいっと大和の足が背伸びするぐらいまで持ち上げる。息ができなくて、大和は苦しむ。
「金剛さん???ッ! 苦しい???ッ!」
「こ、金剛さん! やめてくださいッ!」
 ここで今まで黙っていた翔輝が動いた。軍人として、処罰自体は止める事はできない。それが帝国海軍の伝統だからだ。しかし、今目の前で行われている行為は明らかに軍規違反だ。
 翔輝は金剛の腕を掴んで大和を引き離す。そんな翔輝の行動に金剛はさらに激怒する。
「貴様! 邪魔するのか!?」
 金剛は翔輝に牙を向けるが、翔輝だって帝国海軍軍人。負けずに食らい付く。
「これは明らかに軍規違反ですよ!?」
「やかましいッ! 貴様には関係ない! すっこんでろッ!」
「できませんッ! これは帝国海軍規則第三条第四項に――ッ!?」
 翔輝の言葉はそれ以上続かなかった。
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by diaolo | 2013-10-14 15:34
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